アオヤマ日記

男子大学生がTwitterでは伝えきれないこと、ふと心に浮かんだことなどをゆる~く書いていこうと思います。

二十歳の晩酌〜ロード・オブ・便所〜

今週のお題「家で飲む」

     ○

私の家族は酒好きで、父も母も酒をよく飲む。お酒を毎日飲み続ける両親を見て育った私は、「酒なんぞ飲んでたまるか。一生ソフトドリンクを貫く」と中学時代に心に決めたが、20歳になった現在、たくましく晩酌を始めている。つまり、蛙の子は蛙なわけだ。先日、同期の『ファーブル大先生』にその旨を伝えると、「君は、ひとりで酒を飲むのか。あははは」と大変驚かれていた。そう、私は部屋にこもりひとりで黙々と酒を飲み、世の情勢を批判し、全知全能の神であるかのように自分に酔いしれている。ちなみに、『ファーブル大先生』はその名の通り、虫捕りの達人で、彼にかかれば、宙を舞うバッタでさえ素手で捕獲される。そして先生は風船を買ってもらった子供のようにニタァと微笑む。私と友人の『ようちゃん』は、その瞬間を目撃し、それ以来彼を『ファーブル大先生』と呼ぶようになった。

     ○

お酒の話に戻ろう。ある日、アオヤマ少年は母に尋ねたことがある。

『母上様、なぜ毎日酒を飲むのですか。』

母は言う、『オトナになったらね、嫌なことがいっぱいあるのだよ。』と。

『分かりませぬ。嫌なこととは一体。』

『イロイロよ。』

そのやり取りから、数年。母の唱えていた『オトナは嫌なことがいっぱいある仮説』は正しいことが私によって証明された。

5月上旬。新しいバイト先で眠たそうにしている事務員の人に、仕事の件で分からないことがあったので尋ねてみたら、『わからないってどういうこと?』と弾き飛ばされる事件。この事件が物語ったことは、『眠たそうにしている人には話しかけるな。』ということ。私は、その晩とことん酒を飲んだ。飲みすぎて壁に抱きつき、壁と熱いキスを交わした。『もう、オトナってどうかしてる!』

    ○

『眠たそうにしている人には、話しかけるな』といえば、『お腹が空いている人には気をつけろ。』という私の故郷に伝わる戒めがある。

時は少々遡り春先のことである。桜の蕾が徐々につき始め、浮かれた男女が鼻先を伸ばし、高等学校から脱出して『自由』を手にしたと豪語する新1年生で溢れかえる、いささか鬱陶しい季節である。その季節の中に、静かに身を潜め、決して出過ぎることなく、やや控えめ過ぎる、この世の立役者たちがいる。我が『愉快な仲間たち7人衆』である。その中の1人、『おかつ』を紹介したい。我々『愉快な仲間たち』は、しばしば旅に出る。春の岐阜・下呂温泉、夏の長野巡り、ゴールデンウィークには温泉巡り...。今年の夏には、北海道を車でぐるぐる巡る計画も立てている。そして我々の旅には欠かせないものがある。ご当地グルメである。我が最愛の友人の1人、『おかつ』は大のグルメ好き。全国のグルメをとことん愛し、そして腹十二分まで食べ尽くす。お腹がはちきれそうになるまで食べた後は、ズデンと横たわり、『おかつ式腹式呼吸ひーひーふー』を始める。そんな彼が、先日、京都今出川通りに引きこもる『ヌマラ』という男の元へ旅に出た。旅には、バイクをこの上なく愛す『ライダー・アリアリ』も同伴した。3人は大阪を一日中歩き回り、大学生の特権『自由権』を駆使して遊びに遊んだ。いつしか時間は流れ、夜は9時を過ぎた頃。遊び疲れて京都に戻ろうとしたヌマラとアリアリを、おかつが食い止めた。

『君たち、ネギ焼きは?』

    ○

グルメ王国大阪。その地に君臨せし、我らがボス『おかつ』。彼が大阪で手に入れたいものは、富、名声、力、水族館での憩いの時間、友人達との愛しき時間などでは、さらさらなく、ネギが溢れんばかりに踊り狂う伝説の庶民的フード『ネギ焼き』だったのである。そして、困ったことに彼はお腹が空くと不機嫌になる。そこに、食べたいものを食べることができないという状況が加わると空には暗雲が立ち込める。だから、我々『愉快な仲間達』は彼の胃袋状況を24時間計測し、ちょうど良いタイミングで、彼の欲するフードを提供し、彼の癇癪を沈めている。まさに、フード神おかつ。そして我々は、彼を信仰するフード教の信者。彼の怒りに触れぬよう、おかつにフードを献上しているのである。

    ○

あろうことか、大阪の地で、フード教の信者であるヌマラとアリアリの2人は、フード神の激昂に触れた。

『ネギ焼きなんか、食べないでもう帰ろうよ。夜も9時過ぎてるし』

2人は、愚かである。愚かであり、かつ、フード神の力を見誤っていた。そんな2人に対し、食欲の神おかつが怒らないわけがない。神は、2人を正座させ、食とは何か。空腹とは何か。グルメとは、ネギ焼きとは何かについて教えを説いた。そして、数十分後、神と従順なる信者達は、大阪の地で『ネギ焼き』をたらふく食べ、神の怒りを抑えたという、神話が私の故郷にはある。

これ故に、『お腹が空いている人には気をつけろ』という戒めが我が故郷には代々受け継がれている。

     ○

ゴールデンウィークの温泉巡りでも、神は私に罰をお与えになった。静岡県伊豆市周辺の山道を車で走ったことがある人はご存知かもしれないが、あの辺一帯は便所がない。山道である故に、コンビニもなかなか見つからず、便所という神聖な領域はほぼ存在しない。申し遅れたが、私は『便所神アオヤマ』である。便所を愛し、便所に愛された男。通学時に使う、路線の駅の便所の位置は全て把握し、どのような状況に置かれても速やか、かつ、正確に用を足せるように備えている。ちなみに、洋式派。そんな、便所神アオヤマはゴールデンウィーク伊豆へ向かう車中で地獄の腹痛に襲われた。ゲリラ腹痛部隊が、私の腹めがけて一斉射撃を開始したのだ。すかさず、私は『近くのコンビニに向かってくれ!』と車を運転する『食欲の神おかつ』に直談判した。

『えー。お腹が空いたから、便所はあとね。先にご飯。』

食欲神から、耳を疑うような返答。すかさず私は、『それどころじゃない!事態は急を要する!食欲神よ、便所へ迎え!』と反論した。

それでも、食欲神の答えはノー。なぜならば、お腹が空いてるから。

『腹が空く、故に我あり。』

彼は、まっすぐな瞳でそう言った。実際には、言ったように思えた。

しかし、私も1ジャンル(便所)の神。ここで引き下がるわけにはいかない。そう思い、『じゃあ、神の車で神聖なる用を足します。私も神の1人。腹痛あり、故に我ありです。真剣に真心を込めて、車中で用を足させてもらいます。私には、恥じらうという感情がありません。なぜならば、ここには気の許せる男達しかいないから。あなた方に私の羞恥の姿を見られたとしても、私は心に何の傷も追いません。よって、ここに用をたすことを宣言いたします。』

まさに、神々の戦い。人類が誕生してから、長い歳月が経ったが、決して神々は戦いをやめようとしない。食欲の神。便所の神。インプットとアウトプットの戦い。そんなフザケタ戦いを

数ヶ月前にしていたなぁと、晩酌で酒を飲み過ぎ腹をくだしながら、トイレの中でひーひーふーするアオヤマである。というお話です。

めでたしめでたし。