アオヤマ日記

男子大学生がTwitterでは伝えきれないこと、ふと心に浮かんだことなどをゆる~く書いていこうと思います。

中学同窓会記③

ご機嫌よう、アオヤマである。

 

私の今年の抱負1【先斗町探索】計画、名付けて『プロジェクト・ポント』は着実に進行している。現在は探索に必要な資金を集める段階にまで来ている。まだバイトの採用試験を受けていないが、今週末スーツに身を包み戦いを挑んで来ようかと考える。対戦相手は、昨年度お世話になった某予備校。お手柔らかに頼みたい。

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中学同窓会記もいよいよ第3話に突入した。今回のお話も引き続き、中学同窓会で私が遭遇した珍事件をご紹介していきたい。

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私は成人式を心より楽しみにしていた。5年前に別れてしまった、中学校の恩師に再会できるからだ。彼は熱血指導が有名で、「A山」先生と生徒から慕われていた。式場の席に座りながら、私はA山先生はまだかまだかと待ちわびていた。しばらくすると、後ろの方で「おい、A山先生が来たぞお。」という声が聞こえた。続いて、「なんだあの頭は。」というお化けでも見たかのような震える声も聞こえてきた。私が振り返ってA山先生を探すとそこにはA山先生は見えない。代わりに、高校球児を彷彿とさせる坊主頭で、ややゴツめの30代くらいの男が座っていた。私がA山先生を最後に見たのは、5年前。スポーツ刈りとソフトモヒカンを組み合わせたような髪型をしていて、一部の男子からはカゲで「らっきょ。らっきょ。」と呼ばれていた。私も彼をらっきょのシルエットとして認識したまま卒業した。「むう。らっきょ頭が見えぬ。」私は腕組みをして近くの友人に尋ねた。「君、A山先生は来るのかね。」

「もういるじゃないか。あそこに。」

「いや、いないだろ。らっきょヘッドが見えない。」

「らっきょではなくて、あそこの坊主頭がA山先生だ。」

目を凝らしてみると、たしかに先程の高校球児がA山と同じ顔をしていることに気がついた。

「たしかに、A山先生だ。歳月というものはオソロシイものだな。人の髪の毛まで抜き去ってしまうとは。まさに砂漠に吹き荒れる砂嵐だ。ちょっと挨拶をしてくる。君も一緒にどうだ。」

「お供しよう。」

私たちは、式典が始まるギリギリの時間帯に席を立ちひょこひょこA山先生のもとへ向かった。

「A山先生。ご無沙汰しております。私のことを覚えていらっしゃるでしょうか?」

「おお。覚えているとも、ユウタくんだな。」

「え?」

私は恩師から驚きの返答が来て、一瞬戸惑った。しかし、すぐに我に返って、

「違います。アオヤマです。」

「え?アオヤマ?ウソだろお。」

やはり歳月というものはオソロシイ。私という人間の存在をも薄めてしまっている。5年前の私がカルピスの原液だとしたら、今の私はカルピスを飲み干した後、コップの中で溶けた氷と混ざってしまったカルピスのような存在かもしれぬ。

「それより、先生、頭の方はどうなさったのですか?」

「ああ、これか。これはだな...。」

先生がその日に語ったことを簡単にまとめると、次のようになる。先生は5年前、転任する際に、散髪に行こうと思い立った。しかし、先生の美しい奥さんが「A山先生の髪を切りたい。是非切らせてほしい。」と言ってきたので、その可愛らしいつぶらな瞳に心を折られ、散髪をお願いしたらしい。案の定、散髪は失敗に終わり、先生は中途半端な髪型を坊主頭にするしか方法が残っていなかった。しぶしぶ、坊主頭にしたはいいが、一度坊主頭にすると髪の毛が伸びた時に芝生のようにバサバサになってしまう。芝刈り機で芝生を刈るように、バリカンでバサバサの髪を刈りつづけること5年、手入れに手入れを重ね現在の頭になったらしい。なんと不憫な方なのだろう。私は心の中でクスクス笑いながら、「お気の毒です。なむなむ。」と先生の頭に手を合わせた。

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さて、今更白状するが私は成人式で新しい出会いを求めて内心ワクワクしていた。このようなことを書いて、同級生の諸君に読まれてしまうと少し照れくさいのだが、人生は一度きり。正直に私の心の内を綴っていきたい。

「君、知ってるかね。成人式で新しい出会いが生まれる確率を。」

「いや、知らん。是非教えてくれ。頼む。」

「ズバリ、80パーセントだ。」

「なんと!それは真であるか!」

無論、それは私の友人が昨年の夏についた嘘であった。そんな高確率で男女の出会いが起こるはずがない。そもそもどんな学術論文を根拠に彼はそのようなことを言い放ったのか、理解に苦しむ。しかし、夏から約4ヶ月。私は踊る心を抑えきれずに生きてきた。友人の言うことを純粋に信じ切って生きてきたのだ。そろそろロマンチックな出会いがあってもいいはずであると。ところが出会いはなかった。成人式の夜、私は嘆いた。ひどく嘆いた。あんなにも美しい女性がたくさんいたのにもかかわらず、小心者の私はほとんど声をかけることができなかったのだ。私は初めから終わりまでずっと男友達と一緒にいた。今考えると、何をしていたのだと我ながら阿保なことをしたと思っている。成人式で唯一心残りなのは、女性たちとお話しができなかったことだ。私の友人はあたりかまわず、女性のもとへフラフラ歩いていき、隣の席へちょこんと座って雑談をかわす。

「嗚呼、あいつ!あいつが何故女性と軽々しく会話をまじえているのだ!そこを退け、私が代わりに座りたい!」

同級生の男が仲良く女性と話している姿を、遠くの方から友人たちと妬ましく睨んでいると、私は居ても立っても居られなくなった。

「ええい!今日はヤケ酒だ!男性諸君、飲みに行こう!」

「勿論だ!ヤケ酒万歳!」

「おお!」

私と同じ境遇の男はこの世に溢れかえっている。私の周囲に集まってくる男はだいたい女性との付き合い方に慣れていない。同じ境遇のものは同じ人種を呼ぶのだ。これは20年間生きてきて私が本能で感じ取った、世界の理だ。

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結婚式場で行なわれた二次会の後、私は熱苦しい男たちとともに三次会へと向かった。当然だが、女性は1人もいない。体からむわむわと蒸気を発するような男たちしかいない。その状況が余計に、私の心を寂しくしていく。

「嗚呼、お酒が飲みたいよお。寂しいよお。」

おいおい嘆いて私たちは駅前の居酒屋へとたどり着いた。

「ここで飲もうか。」

「うむ、そうしよう。」

居酒屋に入ると、昔一緒に野球をやっていた後輩の男の子が接客をしてくれた。

「皆さん、ご成人おめでとうございます。」

「おお。ありがとうな。今日はとことん飲むぞ。」

「任せてください。美味しいお酒をお届けします。」

後輩の笑顔に励まされた哀れな男たちはビールジョッキを持ち、ひとり身の自分たちに乾杯した。

お酒が入ると、幾分か寂しさも消えていくが、完全に消えるわけではない。私なんて、ビール5杯を飲んでも心が満たされない。満たされていくのは尿意のみである。

途中で、自然科学部生物班メンバーのライダー・アリアリが男だけの飲み会に参加したい旨を連絡してきてくれたので、私はニコチン中毒者のクレヤマと外へ出て彼を迎えにいった。

私とクレヤマがトボトボ歩いていると、クレヤマが「タバコ買ってくる。」と言って、セブンイレブンへ駆けていってしまった。

「また、ひとりかよ。つらいなあ。」

まるで人生の縮図かと思わせるように、この世は残酷に私をイジメてくる。

「いいこと起こらないかなぁ。」

道端に転がっている石をコツコツ蹴っていると、アリアリとの約束の交差点までたどり着いた。約束の交差点。なんだか、どこかの歌詞にあったような気もする。そんなことを考えていると、私は同級生の女性陣の視線に気がついた。

「おお、諸君。ここで何をしてるのかね?」

「今、このお店の二階ででみんなと飲んでいたの。〇〇くんとかもいるよ。」

○○は結婚式場で散々女性と雑談を交わしていた男だ。奴め、美しい女性陣をここに籠絡していたのか。許せん。○○、未来永劫呪ってやる。

「アオヤマくんは、ここで何をしてるの?」

「ああ、私か。私は、男を待ってる。これから一緒に飲むのだ。」

「そうなんだ。成人式お疲れ様。」

「うむ。ご苦労であった。」

わずか数十秒の会話だったが、私の心は少し温まった。私もまったく単純な男である。

こんな私と会話をしてくれた女性は現在西の都にいると言っていた。私がアナザースカイと常々称えている西の都だ。私は将来、西の都への移住計画も考えているほど、その西の都が好きである。人柄、歴史的建造物、料理、お菓子、抹茶、街の風情。何から何まで日本の美。表面的でペラペラな東の都とは大違いである。

「西の都かあ。いいなぁ。住んでみたいねえ。」

私は日本の美であふれかえっている古都へ想いを馳せた。冒頭でも述べたように、私は今年プロジェクト・ポントを本格的に始動させている。西の都を徹底的に研究するのだ。なんとロマンのある研究なのだろうと我ながら自分の研究に酔いしれている。無論、我が最愛の友人、京都の参謀・ヌマクラは当研究に強制参加させる。頼むぞ、ヌマクラ。

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女性陣と別れた後、ライダー・アリアリがやってきた。

「ご苦労ご苦労。」

そうして我々は、男たちだけで盛り上がっている居酒屋へと向かった。

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中学同窓会記最終幕へ続く